御嶽山噴火 行楽シーズンの登山客に牙を向いた自然 防災ニュース

2020年9月27日

9月27日 2014年9月27日は御嶽山が噴火した日です。噴火したのは紅葉シーズンでお天気の良い土曜日、お昼前でした。火口付近にたくさんの登山客がいて噴火に巻き込まれ、死者・行方不明者あわせて63名と、戦後最悪の火山災害になってしまいました。

御嶽山の噴火は、火山学的には比較的小規模の水蒸気爆発でした。それにもかかわらず大惨事となった原因には、いくつかの「そんなつもりはなかった」という行動が重なった不運がありました。

まず、噴火の観測では、2週間前に2日間、日に50回を超える山頂直下の地震が観測されており、これは警戒レベル2へ切り上げる活動基準の1項目に相当しました。また、噴火の10分前には規模の大きな微動、5分前には顕著な傾斜変動が観測されていて、小規模な水蒸気爆発でも先行現象がしっかりと観測されていたのです。
しかし、当時の警戒レベル更新の基準には「総合的に鑑み」というあいまいな一文が残っていて、せっかくの先行現象を活用しきれていなかったといえます。また、直前に発生した先行現象をアナウンスすることもできませんでした。

当時の警戒レベル1は「平常」とされ、「安全な山」という認識になっていて、御嶽山が活火山であるとの意識が登山者の中に薄れていたのではないかという指摘もされています。当日の登山者と遺族へのアンケートでは4割が火山と知らずにいたそうです。そうした登山者の認識を、監視側もあまりわかっていませんでした。噴火口から半径4km以内には住民がいないこともあり、登山者や観光客を対象とした噴火対策をとっていませんでした。登山届もあいまいで、被災者の人物特定が難航したりもしました。
御嶽山が長野県と岐阜県にまたがる山だったこともあり、噴火当時は被害状況をどちら側で発表するのか、住民でない被災者をどのように公表するのかなど、国と自治体との間で情報の混乱が生じる場面もあり、観光地となった火山が噴火したときの対応の難しさが浮き彫りになりました。

御嶽山噴火を教訓に、火山防災対策推進ワーキンググループが設置されました。現在、次のような火山防災の対策が進められています。
・火山の監視体制、観測体制の強化(常時観測火山50火山)
・水蒸気噴火の兆候を把握する観測体制の強化
・噴火警戒レベルの引き上げ/引き下げ基準の精査と好評
・警戒レベル1を「平常」から「活火山であることに留意」に変更
・情報伝達手段の強化(メール、エリアマップ、観光施設などを経由したプッシュ型提供など)
・退避施設の整備、登山届制度導入。集客施設などによる避難確保計画の作成
・ビジターセンター、ジオパーク、観光事業者などを活用した火山防災の啓発
・火山研究体制の強化(25火山を重点的に実施)、火山研究者と連携した対策の検討

ここしばらくの日本では、大噴火と呼べる規模の噴火は起きていません。しかし、富士山が噴火した宝永噴火のような大規模な噴火もかつてありました。宝永噴火直前には宝永地震などの巨大地震もあり、今後いつどこの火山が噴火してもおかしくありません。富士山が宝永噴火規模で大規模噴火を起こした場合、広域降灰で東京都を含む広範囲の交通機関やライフラインに影響が生じるというシミュレーション結果も出ています。

日本は火山の国であることを思い出し、身近な火山をチェックするなど備えておきましょう。

防災ログ事務局:南部優子


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