災害時の自動車利用 車中泊避難の期待と課題 防災ニュース
2020年11月9日
11月9日 自動車保険会社の調査によると、車中泊を経験したことがある人の約6割が車中より屋内への避難を選びたいと回答しました。車中泊の過ごし方に課題があることが浮き彫りとなりました。
この調査は、2020年8月に全国の自家用車を保有している40代と50代の男性を対象に行われ、800名から回答を得られました。防災に関する意識調査と併せ、新型コロナウイルス感染拡大防止やプライバシー確保の観点から避難方法のひとつとして注目されている車中泊など、災害時の自動車利用に関する調査もなされました。
【災害の危険性についての認識】
調査結果によると、自然災害の危険性について全体の半数以上が「高まっている」と回答。特に被災経験がある人は約8割と高い回答率となりました。
【災害への備えの認識】
その一方で、備蓄整備などの防災対策に関する質問には、8割以上の人がなんらかの準備をしているものの、十分準備していると回答したのは3割程度、被災経験がある人でも4割弱にとどまり、災害への備えが不足しているという認識であることが明らかとなりました。ハザードマップ(防災マップ)の認知については、見たことがない・知らないと回答した割合が4割あり、漠然と災害に関する危険性を認識しつつも、何の災害でどこが危険になりやすいのか、どこに避難すべきなのかなど、具体的な予測まではできていない実態がみえてきます。
【自家用車の利用】
自家用車の利用について、災害時の避難方法として車中泊を選ぶかどうかの質問に対しては、全体の3割強、被災経験者で4割強が「車中泊避難を選びたい」と回答しました。車中泊のメリットとしては、プライバシーの確保や感染症への懸念、子どもやペットのため、盗難対策などを上げる回答がみられました。
避難先の選択を、被災経験者のうち実際に車中泊を経験した人に絞ってみると、車中泊避難を選択する人は4割強と同じような傾向でしたが、一方で屋内避難を選びたいと答えた割合が6割弱と多くなりました(被災経験者全体では、車中泊避難を選択した割合は4割強、屋内避難を選んだ割合は4割弱、残り2割弱が「わからない」と回答しています)。
実際に車中泊をしたことのある人のほうが明確に屋内避難を選択しているという結果からは、車中泊避難に対し、次のような課題が残っているのではないかと推察されます。
・車中に避難できるだけの備蓄をしていない
・避難所に集まる情報や物資、給水などを受け取ることが難しくなる
・市町村などの被災者支援が車中泊を行っている自家用車まで届かない
2016年の熊本地震では、全避難者の約6割が車中泊を含む車中避難をしたともいわれています。一時的な避難も含めて自家用車の利用が多くなる現実は、感染症対策も含め、今後も増える傾向にあります。国や自治体にも、車中泊を避難対策のひとつとする動きが広がっています。
車中避難は、うまく活用すればメリットも多いと考えられます。防災対策のひとつに加えて整備してみてはいかがでしょうか。
防災ログ事務局:南部優子