マンホールトイレの整備 普及いまだ道半ば 防災ニュース

2020年11月9日

11月9日 大規模災害が発生したとき、最も大きな問題のひとつがトイレ対策です。生死を分けるほど深刻になるにもかかわらず、十分な対策をとっている自治体はまだ少ないのが現状で、避難所整備の課題になっています。

下水道のマンホールのフタを外して簡易トイレを設置する「マンホールトイレ」は、衛生面や設置のしやすさ、バリアフリー対策の面からも期待されているトイレ対策なのですが、下水道整備との連携が必要で、なかなか普及していません。内閣府と国土交通省は、防災部門と下水道部門の連携を強化するため、マンホールトイレの整備を推進するよう通知を出し、テコ入れを始めました。

簡易トイレは、避難所で実際に聞いた「今必要なもの」のトップに挙げられています(3日後・4日後の第1位、5日後の第3位)。トイレをがまんして水分を控えたり、心身のストレスを抱えたりすることが災害関連死などの二次被害の原因にもなっています。

マンホールトイレは、マンホールの上に設置することで排泄物が直接下水道に流れて衛生的で、臭いが気にならないため快適だといわれています。また、地面と段差ができないためバリアフリー対策にもなりますし、外の囲いスペースを広くすることで動きやすくなります。仮設トイレと違ってバキュームカーの調達もいらず、日常使用しているトイレに近い環境をすばやく確保できるため、活用が期待されています。東日本大震災や熊本地震でも、避難所に設置されて被災者にも好評でした。

一方、マンホールトイレを活用するためには下水道の整備を充実させ、避難所まで下水管を延伸させておく必要があります。中小規模の自治体だと、下水の整備がなかなか進まない上に、下水道の災害対策も汚水処理や洪水対策などが優先されるため、マンホールトイレまでは手が回らないという現状があります。2018年度末時点で整備済みの市町村はまた3割ほど。設置された数も約3万2,500基にとどまっています。熊本地震のときでも、実際に避難所へ設置できたのはわずかでした。また、災害時に使用した経験から、女性や子供、高齢者が安心して使えるように配慮する運営方法も重要だということがわかってきています。

マンホールトイレ設置の推進には下水道部門と防災部門の協力が不可欠である現状を踏まえ、国土交通省と内閣府が連携して市区町村へ通知を出し、部門を超えた連携でマンホールトイレの整備を進めるよう要請しました。2018年度に策定された「マンホールトイレ整備・運用のためのガイドライン」や、下水道管の延伸など整備費を支援する交付金の活用を促し、マンホールトイレの普及を図るとしています。

防災ログ事務局:南部優子


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