大川小学校の判決確定から1年 学校防災は進んだか 防災ニュース

2020年12月10日

12月10日 東日本大震災の津波により児童と教職員84名が亡くなった宮城県石巻市の大川小学校の訴訟で、学校側の不備を認めた高裁判決が確定してから1年がたちました。 大川小学校の津波事故は、地震発生時に児童の大半が教員の誘導により校庭に集められて、津波が来るまで約50分あったのに校庭にとどまり続け、津波が押し寄せる直前になって裏山ではなく反対の川に近い高台へ逃げようとして犠牲になったものです。

第一審では地震発生後の対応や判断が問題視されましたが、第二審では平常時からの事前対策の不備が指摘されました。当時のハザードマップで大川小学校は津波の予測範囲から外れていたのですが、予測には誤差があること、学校は一般より高い水準で危険性を予測し、マニュアルなどを整備する必要があったとしています。

判決が確定した後、宮城県教育委員会は「学校防災体制在り方検討会議」を設置し、このほど提言案をまとめました。提言では、「児童生徒の命を確実に守る覚悟」を促す研修や、地域ぐるみのマニュアルづくりなどの項目が盛り込まれています。提言を含む報告書案は年内に完成版を公表する予定です。

学校側の不備を指摘した判決が確定した影響は大きく、学校防災や教育活動の見直しが進んでいることはたしかです。とくに安全な環境の整備については進められています。一方で、より確実に児童生徒の命を守るための運用面での取り組みはまだ道半ばです。

宮城県教育委員会が調査したこの1年の学校防災の取組状況では、複数の避難場所や避難経路を設定した学校は半数以上でしたが、被災地訪問や被災校から教訓を学ぶ研修を教職員に実施したかという問いには「未定」と回答した学校が半数近くに上りました。また、災害時の避難方法を地域住民と実際の訓練で確認したかどうかについても、3分の1が未定と回答しています。

学校の教職員は、ふだんの業務も多忙で、これ以上の余裕はないのかもしれません。しかし、災害は明日にでもやってくるかもしれないのです。

次の3月で東日本大震災から10年を迎えます。災害の記憶は着実に風化していきます。子どもたちの命を集団で預かる場として、「確実に守る覚悟」を強くする学びのときや地域ぐるみでの活動など、対策の強化を強く望みます。

防災ログ事務局:南部優子


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