高齢者施設の避難に福祉との連携を 厚労省と国交省が共同で骨子をとりまとめ 防災ニュース
2021年3月29日
3月29日 2020年7月に発生した豪雨災害で特別養護老人ホームが浸水し、多数人の死者が出たことを教訓として厚生労働省と国土交通省が共同で避難の実行性を高めるための検討会を立ち上げ、このほど骨子案がまとまりました。
2020年7月の「令和2年7月豪雨」では、国が管理する10河川で外水氾濫が、16河川で内水氾濫が発生し、全国で死者・行方不明者86人、住宅の全半壊9,625棟、床上・床下浸水6,701棟と、近年の中でも大きな災害のひとつとなりました。
特に被害が集中したのは熊本県で、球磨村の特別養護老人ホーム「仙寿園」が浸水し、一度に14人が亡くなる被害が発生しました。この被災を受け、高齢者福祉施設の避難について、水防災と福祉の両方に関わる課題を検討するための有識者会議「令和2年7月豪雨災害を踏まえた高齢者福祉施設の避難確保に関する検討会」が設置され、厚生労働省と国土交通省の共同で検討を続けてきたものです。検討会は3回開催され、このほど骨子がまとめられました。
検討会では、高齢者福祉施設の避難確保に関し、次のような課題がみられるとしています。
・避難先:計画で定められた避難先が水災害リスクに対応した場所になっていない
・避難先や避難のタイミング:避難先でのケアなどを心配し、早期の避難をためらっている
・訓練:避難先への移動まで実施した訓練がなかなかできない
・職員体制:大雨や豪雨で職場へ駆けつけることができない
・設備:緊急待避のための垂直避難では、階段を使った上階への移動に多大な労力と時間がかかる
これらの課題を踏まえ、今後、避難の実行性を高めるために必要とされる対策は、次の項目について実行性を高めることとしています。
<避難計画・訓練>
・水災害リスクに適切に対応する避難確保計画となるよう、市区町村が施設を支援する
・訓練結果を施設と市区町村が共有し、実効性の高い計画へ見直すよう市区町村が支援する
・避難確保計画はタイムラインを踏まえて分かりやすく作成する
・職員や利用者の家族などへ避難確保計画を周知する
<利用者の避難支援のための体制や設備>
・垂直避難のための施設(避難スペースやエレベータ、スロープなど)の設置
・施設同士での避難受け入れ体制の構築
・地域や利用者の家族と連携した避難支援要員の確保
・職員の知識やスキルの向上として、施設の防災リーダーを育成
・水災害リスクの高い場所、著しい被害が生ずるおそれがある区域などへの施設の新設の厳格化
今後は、福祉関連だけでなく、流域治水の取組のひとつとしても推進を図るとのことです。
防災ログ事務局:南部優子