応急仮設住宅足りるか心配 20都府県が回答 防災ニュース

2021年4月12日

4月12 大規模災害が発生したときに手配する応急仮設住宅について、戸数が足りているかどうかわからないとする回答が20都府県にのぼり、災害発生前に住宅被害の規模を想定することの難しさが明らかとなりました。

この調査は、共同通信社が都道府県を対象に2020年12から翌1月にかけて実施したもので、最も大きな住宅被害を想定する災害を念頭にした設問としました。この結果、20自治体が応急仮設住宅の戸数が足りているのかわからないと回答。災害が発生した後、被害状況をみながら提供するとする回答もありました。

東日本大震災では、応急仮設住宅の建設用地の確保や建設戸数の精査に難航した教訓があり、国としては事前に対策を検討し準備するよう促してはいますが、自治体側では災害が発生する前からの把握は難しいとする実態が浮き彫りになった形です。

応急仮設住宅は、災害救助法に基づき設置されるもので、入居対象者は「住家が全壊、全焼又は流出し、居住する住家がない者であって、自らの資力では住宅を得ることができない者」と定められています。応急仮設住宅には2つのタイプがあり、ひとつは被災後に建設される「建設型仮設住宅」、もうひとつは民間の賃貸物件や公営住宅などを借り上げる形で提供される「みなし仮設住宅」です。

東日本大震災では、建設型仮設住宅が約5万3,000戸、みなし仮設住宅が約6万8,000戸と、みなし仮設住宅のほうが多くなりました。熊本地震でも、建設型仮設住宅が約4,300戸に対し、借り上げ型が約1万5,700戸と、大きく数を伸ばしています。

みなし仮設住宅は、ライフラインの整備も終わっている一般の住宅を借り上げる形のため、いちから土地を確保し建設するより時間もコストも抑えられますし、撤去の必要もありません。また、被災者の暮らしかたの条件にあう物件を探しやすいという利点があります。近年は人口減少の流れもあって、全国的に課題となっている空き家対策をみなし仮設住宅の確保と連携させる取り組みも出ています。

災害が起きていないのに被害規模を想定して需要を算出するのはなかなか難しいものがありますが、かといって何の対策もとらなかったら住宅の提供が大幅に遅れてしまいます。災害が起きてから集約される「動的な情報」は、想定はできてもコントロールすることはできません。一方、土地の候補となりそうなスペースや建設関連の事業者や出回っている資材の数、借り上げられそうな住宅リストなどは事前に整理しておける「静的な情報」。実態把握が可能です。常に最新版にしておき、被害の大きさに応じてすぐに活用できるよう整備するだけでも、災害発生後の対応がスピードアップします。

年度が変わる時期には情報の更新を行って、臨機応変に活用できる体制を整えておきましょう。

防災ログ事務局:南部優子


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