5月の災害:揺れを伴わない津波がやってきた「チリ地震津波」 防災ニュース

2021年5月11日

5月11日 前触れなく突然襲いかかる津波災害があったことをご存知でしょうか。1960年5月23日に南米で発生した「チリ地震」の津波災害です。チリで発生した巨大地震による津波は、ほぼ1日かけて太平洋を北上し、東北地方を中心に死者・行方不明者142名を出す大きな被害をもたらしました。

チリ地震の震源地はチリ南西沖、南米プレートの下にナスカプレートがもぐりこんだチリ海溝で発生しました。モーメントマグニチュード9.5という世界最大規模の地震で、直前にマグニチュード7~7.5クラスの地震が5~6回続いた後9.5の地震が襲ったといいます。津波は地震発生15分後に起きた約18mの大津波がチリ沿岸部を襲った後、広く太平洋をわたって、15時間後ハワイに、23時間後日本に到達しました。

チリと日本は約1万7500kmも離れていますが、津波は平均時速777kmというジェット機なみのスピードで太平洋を進み、1日足らずで日本を襲いました。北海道から三陸地方、紀州、四国、九州、沖縄まで、広い範囲の沿岸に到着。三陸地方では津波高は最大6.3mにも達し、死者・行方不明者142名、負傷者855名、全半壊4万棟など、甚大な被害となりました。

当時は遠地の地震を計測したり監視したりするシステムがなく、津波の警報を出すタイミングが遅れてしまいました。早朝から出漁などで浜に人がいたところでは、海をよく知っている人がいつもと違うようすを警戒し、避難して助かった地域がある一方、近地津波で被害が起きにくかった奥の湾では避難を呼びかけるサイレンの意味を知らないなど行動が遅れ、多くの犠牲者が出ました。その他にも、周期の長い津波だったこともあって、引き潮になったときに浜まで魚介を採りに出てしまい、押し波に巻き込まれたりもしたといいます。

この遠地地震による津波被害をきっかけに、太平洋広域での地震・津波情報を共有する組織が国連のもとに組織されました。現在は、気象庁が「遠地地震に関する情報」として、地震の発生時刻、発生場所、規模(マグニチュード)、日本や国外への津波の影響などを地震発生から30分程度で発表することになっています。

画像出典:内閣府防災 災害教訓の継承に関する専門調査会報告書 1960チリ地震津波より 数値解析によるチリ地震津波の再現 左:津波発生から2時間後 右:津波発生から24時間後 口絵1・2より作成

防災ログ事務局:南部優子


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