災害記録をデジタル活用、記憶の伝承へ 防災ニュース

2021年5月12日

5月12日 いつ、どこで起きるかわからない災害。毎年のようにやってくる風水害と異なり、地震災害は発生する頻度も場所も、予測ができません。いのちに関わるほどの巨大な地震災害は特に、まだ一度も身近に経験したことがなくイメージできない人も多いことでしょう。しかし、だからといって「災害は経験した人にしかわからない」と考えていては、災害への対処はいつまでたっても進みません。一生に一度遭うかどうかという大きな災害こそ、これまでの貴重な「記録」を教訓に、これからの者たちが学ぶべき「記憶」として次に生かしていかなければなりません。

平成の三大地震ともいえる「阪神・淡路大震災」「東日本大震災」「熊本地震」は、当時の被害のようすをはじめ、緊急部隊や行政などの応急復旧対応の記録が膨大なデータとなって存在しています。そして、これらを今後の教訓として活用できるよう「デジタルアーカイブ」としていく取り組みが進められています。

阪神・淡路大震災では、神戸市が2020年に公開した「神戸GIS震災アーカイブ」があります。地理情報システム(GIS)を活用し、地図上で当時の被害状況が整理されています。記録者のコメントや専門家の解説なども入った概要がポップアップ表示され、画像や映像の詳細情報も展開します。

東日本大震災では、国立国会図書館と総務省が2013年に立ち上げた「ひなぎく」(東日本大震災アーカイブ)があります。東日本大震災に関する全国のデジタルデータを一元的に検索・活用できるポータルサイトで、保守・運営は国立国会図書館が行っています。被災地の画像、音声、動画、WEB記事、調査報告書などを横断的に検索できます。(余談ですが、ひなぎくは、花ことばが「未来」「希望」「あなたと同じ気持ちです」。この思いを込めて愛称を決定したそうです。)

熊本地震では、2016年に熊本県が立ち上げた「熊本地震デジタルアーカイブ」があります。このアーカイブの特徴は、データ収集時に詳細な情報と商業利用も含む二次利用の許諾を求めたことにより、大半のデータが二次利用しやすくなり、教材などへの活用の幅が広がったところです。

写真や映像の記録などでは、撮影の日時や場所などの情報が抜け落ちたデータも多く、データベースで検索できる状態にしづらかったり、データの所有者から二次利用の許諾を獲っていないために引用できなかったりするなど、集まってくる膨大なデータの整理や登録に課題が残っています。今後は、デジタルデータのアーカイブ化のノウハウを継承し、個々の記録が社会の記憶として活用できるよう、横断的な利活用のためのプラットフォームの整備が必要となっています。

「神戸GIS震災アーカイブ」
https://www.city.kobe.lg.jp/a05822/shise/opendata/shinsai.html

「ひなぎく」(東日本大震災アーカイブ)
https://kn.ndl.go.jp/#/

「熊本地震デジタルアーカイブ」
https://www.kumamoto-archive.jp/

防災ログ事務局:南部優子


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