学校防災の取り組みは道半ば 水準達成5割に満たず 防災ニュース

2021年3月21日

3月21日 東日本大震災から今月で10年が経過しました。宮城県の大川小学校で津波避難対策の不備を認めた訴訟確定判決を踏まえ、学校防災の水準が強化されているところですが、その取り組みには時間がかかっています。
共同通信社が全国1741市区町村を対象としたアンケートでは、強化された学校防災の水準を達成しているのは45%あまりと、半数に満たない実態が明らかとなりました。

アンケートは、2020年10月から12月にかけて実施され、84%にあたる1469市区町村が回答しました。
大川小学校の訴訟裁判の判決で求められた防災水準の達成に向け、学校対策の見直しを行ったかの問いに対しては、判決の確定前から水準を達成していた(27%)、判決確定後の見直しで達成した(19%)と、達成済とした回答は全体の5割に届きませんでした。現在見直しを行っているとする回答が約20%あるものの、今後見直し予定の市区町村は25%、対応予定がないとする回答は8%と、約3分の1の自治体は未着手の状態です。

大川小学校の津波事故では、児童と教職員84名が亡くなりました。学校や石巻市の事前防災の不備を認め、2019年に高裁判決が確定しています。

地震発生当時、児童の大半が教員の誘導により校庭に集められて、津波が来るまで約50分あったにもかかわらず校庭にとどまり続け、津波が押し寄せる直前になって裏山ではなく反対の川に近い高台へ逃げようとして犠牲となりました。
第一審では地震発生後の対応や判断が問題視されましたが、第二審では平常時からの事前対策に不備があったとして、たとえハザードマップで津波の予測範囲から外れていても、被害想定には誤差があり、学校は一般より高い水準で危険性を予測してマニュアルなどを整備する必要を指摘されました。

アンケートの中では、危険区域や安全に避難できると想定されているはずの避難場所を示したハザードマップより高いレベルの対策を求められていることに戸惑っているようすが伺えます。また、学校教員はふだんの業務だけでも多忙です。防災の専門性も必要とされるなか、人員不足やノウハウの不足など様々な課題があり、取り組みに時間がかかっている実態が浮き彫りになってきました。

実情は厳しいでしょうが、災害は明日にでもやってくるかもしれません。
学校や自治体任せに未達を指摘するのではなく、現状を踏まえた自助や共助も含めた検討を行い、子どもたちの命を「確実に守る覚悟」を強くする学びや地域ぐるみでの活動など、一人ひとりにできることを考えて取り組みを進めていく姿勢が大切です。

防災ログ事務局:南部優子


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