伊勢湾台風をきっかけに生まれた災害対策基本法 防災ニュース

2020年9月28日

9月28日 大規模な災害があると、その教訓を活かして国や自治体の対策が強化されていきます。日本の災害対策の軸となる「災害対策基本法」が制定されたきっかけは伊勢湾台風でした。

伊勢湾台風が和歌山県潮岬に上陸したのは、1959年9月26日の夕方。勢力の強いまま本州を縦断し、特に伊勢湾岸では高潮による被害が甚大となりました。全国で5000人を超える死者・行方不明者が発生し、風水害による人的被害では戦後最悪でした。

伊勢湾台風は、第2次世界大戦から14年後と、戦後の日本の社会状況を現した災害ともいえました。
急速に都市化した住宅地の浸水、埋め立てなどによる地盤沈下での被害拡大、木材需要・合板輸出の増加で積み上げられていた貯木が高潮で大量の流木となり堤防を破壊、台風情報の伝達と災害対応の意識の不備などが挙げられています。

災害と法律の関わりについて、少しみてみましょう。
戦後まもなく、国力のないときに襲いかかった南海地震(1946年)やカスリーン台風(1947年)、福井地震(1948年)などの災害を踏まえ、災害救助法(1947年)や消防法(1948年)、水防法(1949年)、建築基準法(1950年)などが制定されていきました。このような背景のなか、伊勢湾台風をきっかけに、それまでばらばらと制定されていた災害に関する法制度を整備する動きとなり、1961年に災害対策基本法が制定されたのです。

災害対策基本法は、個別に制定されていた災害関連法令をまとめあげ、災害対策の基本となる方針を示したものです。国・都道府県・市町村・国民や事業者の各主体が適切に防災活動を行えるよう、各自の責任の所在やすべきことをはっきりさせています。また、すべての災害に基本となる対策と、災害事象別の対策も明記し、予防・応急・復旧復興の段階に分けて対策を定めています。この災害対策基本法をもとに防災計画が策定され、事前対策や災害時の対応などが整備されています。

災害対策基本法は、これまでに2回、大きな改正を行いました。
ひとつめは1995年の阪神・淡路大震災です。高度化した情報網の寸断やライフラインの停止などの都市機能が停止したり、自主防災やボランティアによる防災活動など、社会状況を反映させた改正となりました。
もうひとつの改正の契機は2011年の東日本大震災です。想定を超える大きさの災害が発生して行政機能そのものが停止して対応できなくなった教訓などを踏まえ、大規模で広範囲の災害に対する考え方が整理され、取り組み強化が図られました。

(画像出典:西田玄「災害対策関係法律をめぐる最近の動向と課題」立法と調査2019.9 No.404)

(画像出典:中部災害アーカイブス 伊勢湾台風より 左:名古屋港東部 右:水没した国道1号と近鉄名古屋線 陸上自衛隊撮影 http://www.cck-chubusaigai.jp/kinnen_saigai/19590926.html)

防災ログ事務局:南部優子


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