熊本地震、備蓄が役立った コラム
2017年6月23日
6月23日
福岡大学 工学部 建築学科 教授
高山 峯夫
日経新聞(6/16付けの夕刊)に『熊本地震の被災企業、「備蓄が役立った」46%』という記事があった。
政府は16日、2017年版の「防災白書」を閣議決定した。16年4月の熊本地震で被害を受けた企業などへのアンケート調査の結果を掲載。備蓄品の購入や買い増しが役立ったとの回答が4割を超えた一方、BCP(事業継続計画)の見直しなどの課題が浮かんだ。
調査は今年3月、熊本地震で震度6弱以上を記録した熊本県内の24自治体に本社のある2500社と、これらと取引のある全国の2500社を対象に実施。それぞれ1255社、756社が回答した。
震災時に有効だった取り組みを複数回答で尋ねたところ、最多は「備蓄品(水、食料、災害用品)の購入、買い増し」で、回答した554社のうち46%が挙げた。「災害対応担当責任者の決定、災害対応チームの創設」が38%で続いた。
一方、災害時に資金援助などを受ける協定の締結が役立ったとした企業は8%。防災セミナーの受講や社員への防災関連資格の取得推奨が有効だったという企業も6%にとどまり、取り組みが浸透していないことがうかがえる。
調査では今後取り組みたい防災対策についても聞き、1294社が回答した。「BCPの見直し」が49%で最も多く、けがや交通網の寸断で出勤できなくなった従業員の「代替要員の事前育成」が48%だった。災害時に活躍できる人材の育成や設備の拡充など、社内態勢の見直しに関する項目を挙げた企業が多かった。
回答企業のうちBCPを策定済みの割合は大企業(資本金10億円以上など)では7割を超えたが、中小企業は1割にとどまった。内閣府は「事業継続のための優先事項の洗い出しなど、BCPの策定に力を入れてほしい」としている。
白書ではアンケートとは別に、製造業や流通業など10社にヒアリング調査をした結果も紹介。事業所の建物を設計段階から耐震強化したことで被害を抑えられたり、通行可能な道路の情報を社内で共有したりといった減災や災害対応に役立つ事例が多く寄せられた。
BCPは、Business Continuity Planningの略で、事業継続計画となる。災害が発生しても事業を中断しないために、また中断したとしても、いかに早く本来の事業を再開できるかについて計画を立てておくこととなる。中小企業では、まだまだBCPの策定は十分ではないようだ。
では、企業ではなく、個人や家庭ではどうだろうか。
個人や家庭では、LCP(Life Continuity Planning)、すなわち「生活継続計画」が重要となるのではないだろうか。災害対応グッズや水などを備蓄しておくということも大事だと言われている。こちらをハード対策とすれば、ソフト対策として、いかに早く通常の生活を取り戻すかを事前に考えて情報を集めておくことも重要ではないだろうか。たとえば、補助金や保険金の申請はどうすればいいとか、役所への被害届や避難所はどこに設定されているか、などなど。
もちろん、住宅の耐震性を確保することも大事だが、万が一のときに備えて、LCPの策定を事前に行うというのはいかがだろうか。
福岡大学 工学部 建築学科 教授
高山 峯夫
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