深江丸が鬼界海底カルデラの第2回観測航海を終了、 活動的海底巨大溶岩ドームを確認 記者会見資料
2017年4月24日
4月24日 第24回学長定例記者会見資料7(2017年3月31日)
神戸大学海洋底探査センター長
巽 好幸
神戸大学海洋底探査センターでは、日本に破局的な被害をもたらす巨大カルデラ噴火の 予測に向けた研究を進めています。噴火を引き起こすマグマの状態を正確に把握するには 人工地震などを用いた稠密な地球物理学的観測が必要ですが、人口が密集する陸域ではこ れが困難です。そこで海域に存在し、しかも日本列島で最も直近(7300年前)に超巨 大噴火を起こした「鬼界カルデラ」をターゲットにして、神戸大学大学院海事科学研究科 附属練習船「深江丸」を用いて、3月1日から10日間の第2回観測航海を実施しました。
今回の航海では、昨年10月の初回観測航海で設置し観測を継続していた海底地震計5 台、海底電位差磁力計2台を全て無事に回収し、新たに海底電位差磁力計1台を設置しま した。回収した装置に記録されたデータを解析することで、鬼界カルデラ火山の地下にお けるマグマ活動の概要を把握できると期待されます。
また、新たに導入した遠隔操作型水中ロボット「SHINDAI-2K」を用いて海底の観察を 行いました。その結果、カルデラ内の海底に直径約10km の巨大な溶岩ドームが存在し、 その一部で気泡が発生していること、このドーム上には堆積物が殆ど存在しないことなど を確認しました。これらのことは、この溶岩ドームは7300年以降の比較的最近に形成 され、現在でも活動的であることを意味します。さらに、ドレッジを用いて溶岩ドームの 岩石を採取することに成功しました。この岩石は、7300年前の超巨大噴火で噴出した マグマと同様に珪長質なものであり、今後の岩石学・地球化学的解析を用いてこれらのマ グマ類縁関係を明らかにすることができると期待されます。
初回の調査と併せて、2016年度に導入した装置群を用いた調査観測は予定通りに終 わり、深江丸が最新鋭の観測船として活躍できることが明らかになりました。今後は収集 したデータの解析結果を学会や論文で発表するとともに、世界で初めて巨大カルデラ火山 におけるマグマシステムの高精度イメージングを行い、火山大国日本における巨大カルデ ラ噴火の予測に貢献したいと考えています。
神戸大学海洋底探査センター長
巽 好幸
・第24回学長定例記者会見資料7
http://www.kobe-u.ac.jp/documents/info/usr/press/press_2017-0331-7.pdf