おかしいぞ!防災の常識 (Vol.3) 災害対策全般

2016年9月26日

3 被害記録から

災害対策研究会 宮本 英治 / 釜石 徹

【共通】

3-1. 地震の揺れだけでは人は死なない
人は地震の揺れそのものではなく家屋の倒壊、家具転倒や火災で死傷する。阪神淡路大震災での死者はおおよそ6,400名で、直接死5,500名(即死5,000名、防ぎえた死500名と言われている)、関連死900名である。なお、事後対応(救出、初期消火、災害時医療活動など)で即死5,000名を減らすことはできない。

3-2. 震度と建物被害は比例する?
震度は揺れの大きさであり建物被害と比例するように思えるが、計測震度は周期0.1秒~1.0秒の地震動の平均で、建物被害と比例しないことがある。東日本大震災では建物に影響する周期1.0~2.0秒の地震波は阪神淡路大震災の1/3しかないのに、0.2秒付近の地震波が大きく、震度は大きいが建物被害が極めて小さい結果となった。

3-3. 液状化では人は死なない(液状化は天然の免震装置)
液状化とは地下水面下の土が揺れによって繰り返し変形を受け、土の構造が壊れて液状体となる現象である。液状体になると天然の免震装置となって揺れを急激に緩やかするため人命被害を抑える一方、軽いものは浮かび重いものは沈み、建物は傾く。液状化では財産を失う。
 ※要補足
  ・噴砂と地盤沈下のメカニズムについて
  ・側方流動について(人命にかかわる被害となる)

3-4. 避難所とは?地震から身を守る場所ではない。
これから襲いくる災害であれば、避難する場所は
  津波からの避難は・・・・・・・・・・・・津波避難場所
  広域火災からの避難は・・・・・・・・・・広域避難場所
地震が襲ってきた後は
  住む家を失った方が身をよせる場所は・・・収容避難所
  自宅での生活が困難な要援護者・・・・・・福祉避難所
地震から身を守る避難所はどこにもない。

3-5. 要援護者が収容避難所から脱走する
収容避難所は家を失った方が頼らざるを得ない劣悪な環境にある収容所であり、東日本大震災では要援護者にとっては看取り室ともなった。従って要援護者の介護施設への脱走が始まる。スペース、支援者、支援方法、そのための装備がそろわなければ要援護者支援はできない。要援護者「避難」支援が看取り室への誘導となっていないか?

3-6. 被災から復興までの時間(目安)は?
東日本大震災では4年目を迎えても復興住宅地の造成中である。住宅完成まで5年を要するところが多い。それまでは仮設住宅生活を余儀なくされる。

<災害名称>

<仮設住宅入居開始>

<復興住宅入居開始>

直下地震

1ヶ月

6ヶ月

都市直下地震

3ヶ月

1年

巨大海溝型地震

6ヶ月

5年

 ※要補足
  ・直下地震・・・・・大都市以外で起きる一般的な直下地震
  ・都市直下地震・・・東京や大阪などの大都市で起きる直下地震。被害が大きく災害対応が遅れる。

【都市直下地震】

3-7. 阪神淡路大震災では何人に一人が閉じ込め・下敷きになったのか?
阪神淡路大震災では火災による死傷者は少ない。倒壊した住宅の閉じ込め・下敷きになった方は50人に1人(20世帯に1人)、半数は軽傷で救出されるが、後の半数が負傷(100人に1人=1%)でその内の30%が死亡(0.3%)である。すなわち神戸、芦屋、西宮などの市民200万人の0.3%の約6,000名が亡くなった。

3-8. 年齢別死者数が物語るもの
阪神淡路大震災での死者の大半が高齢者(高齢者の住まい≒古い木造住宅)であるが、若年層の中では
20代前半が突出している。下宿生(神戸大学生の死者39名の内37名が下宿生であった)もしくは働き始めた若年層である。大学生の親や、新入社員を預かる人事担当者が気を配らなければならない。

3-9. 新幹線が空を飛ぶ
阪神淡路大震災は新幹線が走行する直前の5時46分に発生し、新幹線の高架橋が崩落したが大規模事故は起きなかった。これが新幹線走行中であれば、多くの車両が住宅地へ突っ込んでいく大参事の可能性もあった。新潟中越地震では上越新幹線が脱線、東日本大震災では試運転列車が脱線した。大規模事故の可能性は残る。


災害対策研究会

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『おかしいぞ!防災の常識 Ver.1.0』PDFファイル(1.37MB)


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