おかしいぞ!防災の常識 (Vol.2) 災害対策全般
2016年9月11日
2 防災の心得
災害対策研究会 宮本 英治 / 釜石 徹
2-1. 防災とは
ベストの危機管理とは危機に陥らないこと、セカンドベストは被害の最小化と早期復旧である。すなわち、予防対策・初動対応・復旧対応を的確に実施できる人財育成が重要である。防災とは予防対策+人財育成(被害を出すな!良き支援者たれ!)であり、地域防災も企業の事業継続計画(BCP)も同様である。
2-2. 敵を見誤るな!
〇首都直下地震(都心南部直下地震)の被害は阪神淡路大震災の何倍か?
阪神淡路大震災の被災地は六甲山と海岸にはさまれた「震災の帯」とよばれる細長い地域であるが、阪神淡路大震災と同じ大きさ(M7.3)の地震が都心直下で起きた場合、震度6強以上の被災地は横浜・川崎から東京都区部、埼玉県南部、千葉県沿岸部にまたがり、予想される被災者は5~20倍となる。
〇南海トラフ地震の被害は東日本大震災の何倍か?
可能性の高い南海トラフ地震(レベル1)はM8.6程度であり、エネルギーは東日本大震災M9の1/4程度である。しかし被害の大きさは、東日本大震災では建物被害が少なく被災者は津波に襲われた50万人であるが、南海トラフ地震では建物被害も津波被害も大きく、静岡、山梨、愛知、三重、和歌山、徳島、高知、愛媛、宮崎までの被災者は10~30倍に及ぶ。
2-3. 地域での基本方針は「避難所を頼らないで済むこと」
予防対策の目標は「10年かけてのまちづくり」「次の世代のためのまちづくり」である。
地震発生後の目標は、向う3軒両隣が協力し合って劣悪な環境の避難所を頼らないで済むことであり、そのための地域住民の優先順位は下記の通り。
1)自分・家族の安全確保
2)地域の安全確保(救出救助・初期消火)
3)要援護者支援、被災者支援(困っている人を助けよ)
※要補足
・避難所は地域の防災拠点(情報拠点、配給拠点)とすべきである。なお避難所では避難者をお客さんにさせない。避難者自らが動いて運営に参加させる。
2-4. 行政職員の災害対応の基本方針「地震発生当日は登庁に及ばず!地域の先頭に立て!」
市民の生命・身体・財産を守るという地域防災計画の目標を達成するための災害対応を行う行政職員の優先順位は下記の通り。
1)自分・家族の安全確保
2)市民の先頭に立って地域の安全確保(救出救助・初期消火)
3)行政職員としての対応
市町村職員数は消防職員の10倍である。一部の本部要員(参謀)を除き、行政職員も家族の安全確保を行い、地域の安全確保の先頭に立ち、その後、できるだけ速やかに登庁する。
2-5. 一般的な企業の災害対応の基本方針は「地域の復旧なしに業務の再開なし」
製造業などの社会的緊急対応を行わない一般的な企業の従業員の優先順位は下記の通り。
1 自分・家族の安全確保
2 地域の安全確保
3 被災した同僚支援
4 企業の復旧対応と業務再開
復旧対応の合言葉は「地域の復旧なしに業務の再開なし」と「サプライチェーン全体での一心同体の復旧」である。地域復旧を無視し、代替調達などでの自分だけの早期復旧は在庫の山を作るだけである。
災害対策研究会
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