南海トラフ地震臨時情報は予知ではない|心構えで巨大地震に備える 防災ニュース

2022年11月28日

11月28日 先日の記事で、北海道・三陸沖の海溝型地震が発生した場合に、後から起きるかもしれない巨大地震へ備えるための注意情報を紹介しました。
国難クラスの巨大地震として知られる南海トラフ地震にも同様に、巨大地震の襲来への構えをもつための情報があります。「南海トラフ地震臨時情報」です。

駿河湾から日向灘まで広がる南海トラフの臨時情報というと、2004年から2017年まで発表されていた東海地震に関する情報(予知情報・注意情報・観測/臨時・定例調査情報)のイメージが重なって、「これから南海トラフ地震が来る」という予知情報のように思われがちですが、「南海トラフ地震臨時情報」は予知ではありません。

南海トラフ地震臨時情報は、南海トラフの震源域で「半割れ」「一部割れ」「ゆっくりすべり」などの異常現象が観測され、その現象が南海トラフ沿いの大規模な地震と関連しそうな場合に発表される情報です。つまり、特定の異常現象をもとに、その影響を受けて巨大地震が発生した場合に備えるための警告の情報といえます。

南海トラフ地震臨時情報は、南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まったと評価された場合などに気象庁から発表されます。
2019年3月に策定された「南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応検討ガイドライン(第1版)」を受けて、2019年5月31日より運用が開始されました。

ここで発表される情報は、「南海トラフ地震臨時情報」と「南海トラフ地震関連解説情報」があり、異常が観測された場合、まず「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」が、発生後5分から30分ほどの間に、気象庁から発表されます。
(調査中)の発表後、検討会が開かれ、最短2時間ほどで、地震発生の可能性の大きさに応じて、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)」「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表されることになっています。地震発生の可能性が小さい場合は「調査終了」となります。

南海トラフ地震臨時情報は、地震の発生の状態に応じ、以下のパターンに分かれて発表されます。
・プレート境界のM8.0以上の地震(半割れケース)
・M7.0以上M8.0未満の地震または周辺の範囲でM7.0以上の地震(一部割れケース)
・通常とは異なるゆっくりすべりが観測された場合(ゆっくりすべりケース)

では、このような情報が発表されたとき、実際にどんな行動をとればよいのでしょうか。
これについては、「南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応検討ガイドライン(第1版)」を確認しましょう。

同ガイドラインには、地方公共団体や企業などが、南海トラフ地震の発生可能性が相対的に高まったと評価された場合に実施すべき防災対応を計画にまとめるときに必要な情報が以下の構成で記載されています。
・共通編(基本的な考え方や国が発表する情報の流れ)
・住民編(住民および自治体の対応)
・企業編(指定公共機関などの対応)

「半割れ」「一部割れ」「ゆっくりすべり」の3つのケースについて、南海トラフ地震の発生が高まった場合の社会的な影響、覚知した場合の住民及び自治体の対応、企業の対応、最も警戒すべき時間が整理されています。

南海トラフ地震臨時情報は、必ず地震が発生すると予知する情報ではありません。また、臨時情報が出ないまま、突然に巨大な地震が発生する可能性も十分に考えられます。
この臨時情報は、あくまで「いつ巨大地震が発生するかもしれない危険性が高まった間、どのように構えるか」を、企業や住民、自治体がそれぞれの立場から心得ておくものです。
臨時情報が発表されてからでは準備も整いません。今のうちからどのような備えが必要なのかを確かめ、情報や備蓄、対応方法などを整理しておきましょう。

本文参考資料「南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応検討ガイドライン(第1版)」
http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/pdf/honbun_guideline2.pdf

防災ログ事務局:南部優子


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