組織の災害対応を体系的に捉えよう 防災ニュース

2024年5月10日

<5月10日投稿>災害対応は、災害事象が起きてから行動していたのでは後手に回ってしまいます。先手を打って動く必要があるのですが、一方で、事象が起きてみないと具体的な被害が把握できず、効率化を求めすぎるとかえって身動きがとりづらくなるおそれもあります。このため、災害対応力には、事前に備えておくべき被害抑止対策と、特定の事象が発生したときの被害想定に基づいた被害軽減対策の2つのアプローチから、バランスのよい判断と行動が不可欠です。

さらに、災害が起きていない日常の経済活動と完全に切り離した特別な備えを行うのは、コスト的にも人員配置の面でもリソースを避けないのが現状です。日本では自然災害の発生頻度が高いにもかかわらず、「災害が起きてからがんばる」人たちが多いのも、こうした背景が関係しているといえるでしょう。

災害への向き合い方については、視点を変えて「日常の組織を強化する」対策をおすすめします。突発事象へすばやく対応できる体制や役割分担、指示判断の権限、情報連絡系統、人的物的リソースの適切な配置と管理といった、災害対応力の向上を図る整備はそのまま普段の組織改善につなげていくことができるはずです。さらにいえば、災害対策は組織内のすべての人にとって重要な課題ですから、組織改善の大義名分としても活用しやすい利点があります。

組織改善を意識した災害対応力の強化を行うには、まず災害対策全体を体系的に捉え、効果的な強化ポイントを検討していくとよいでしょう。なかでも重要なのが、組織を牽引するリーダーの災害対応力強化です。組織リーダーに対しては、一般的なリスク把握や被害抑止、被害軽減といった対策のほか、災害対応業務を遂行する上でのガバナンス(組織運営)や災害情報の判断力を強化したうえで、災害発生直後から応急復旧、経済復興までのフェーズごとに、次のような課題を適切に捉えていくトレーニングが必要です。
・災害対策本部の設置と運営、BCP発動、各種情報の収集、分析、意思決定、伝達
・組織内の人的・物的状況の把握と配置、他機関との連携
・救助、応急対策、避難、被災者支援
・生活再建、地域の再建との連携、経済活動の回復

災害が起きてしまうと眼の前の対応に追われ、体系的な理解は難しくなります。日常の組織力強化と並行しての防災対策を行い、「日常でも強い組織」を目指しましょう。

【参考情報】災害対応を体系的に「見える化」した災害対策士制度
東京大学生産技術研究所付属災害対策トレーニングセンター(DMTC)と一般社団法人災害対策トレーニングセンター支援会(DMTC-SA)により、災害対策能力を検定する認定制度「災害対策士」が新たに設置されました。
https://www.dmtc-sa.com/cont1/35.html

災害対応に従事する者のスキルや専門分野を理解し効果的な連携を図るため、一人ひとりの災害対策の能力を「見える化」したもので、被災地での需要に応えるために災害対策を体系化し、8つの分野を設定しています。また、それぞれの分野が活動内容やレベルに応じてC級からA級までの階級制度を採用していること、更新検定を前提にしているところが、防災士とは異なっています。

防災ログが主催する「防災・減災セミナー2024」の会場にて災害対策士の受験もできます。直近では福岡(5/17)。
詳しくは以下の案内を御覧ください。

防災ログ事務局:南部優子


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