令和2年台風10号は異例の呼びかけから始まった 「特別警報級」とは 防災ニュース

2020年9月14日

9月14日 9月に入るのを待っていたかのように、台風が襲来しています。週末にやってきた台風10号は、日本に接近する4日も前から政府が異例の警戒を呼びかける事態となりました。これは、台風10号が「台風の特別警報級」の威力をもつことがわかったからです。

台風の特別警報とは、数十年に一度くらいしか起きないような大きな勢力の台風で、暴風・高潮・高波の3つの特別警報がまとめて、台風が接近する前に出されます。大雨の特別警報は、大雨が降って災害が迫る状況になってから発表されます。これに対し、台風の特別警報は、台風が近づく12時間前に対象の地域へ出されます。暴風が吹き出すようになってからでは逃げることもできませんし、家の周りへの対策をとることもできないからです。

台風の特別警報は、中心気圧が930hPa以下、または最大風速が50m/s以上を目安に発表されます。(台風が来る頻度が高い沖縄県などは中心気圧910hPa以下、最大風速60m/s以上)

これまで日本に上陸した台風で中心気圧の低かった台風には次のようなものがあります。
・第2室戸台風(1961年9月)925hPa
・伊勢湾台風(1959年9月)929hPa
・平成5年台風13号(1993年9月)930hPa
今回の台風10号は、沖縄県に接近しつつあった9月5日時点で中心気圧が920hPaと、そのまま鹿児島県へ接近すると特別警報が出される可能性が十分ありました。台風の接近が週末と重なったこともあり、気象庁が早い段階から繰り返し発表を行いました。政府も関係閣僚会議を開き、最大級の警戒と事前の対策を呼びかける事態となりました。

異例の警戒を受け、新幹線を始めとする列車の運休や、郵便の集配業務停止、コンビニエンスストアの休業、メーカー各社の工場の操業停止など、九州を中心に各地で対策がとられました。

台風10号は、結果的に中心気圧の予想がやや下回り、また若干予想より西へずれたこともあって、鹿児島県での台風による特別警報を発表することはなくなりました。しかし、台風の威力が急に弱まったわけではなく、各地で大規模な停電や建物被害、土砂災害などが発生し、全市避難などの影響が出ています。
(被害など、10号による影響がどのようなものだったかは、別途記事にてまとめる予定です)

気象災害が大型化する傾向にあり、毎回のように「数十年に一度」といった表現を目にするようになっています。いわゆる「オオカミ少年」のようなもので、何度も聞いていると慣れてしまい、たいしたことがないように感じるかもしれませんが、災害の威力が大きいことに変わりはありません。

災害は、事象の大きさと社会の脆弱性が重なって発生します。大きな台風がきたときでも、しっかりと対策をとって事前の避難や休止を躊躇せず行うからこそ、被害が小さくてすむわけです。たいした被害にならなかったから台風もたいしたことがないという勘違いは避けなければなりません。

「特別警報級」といわれたとき、やみくもに煽るのでも軽視するのでもなく、実際にどのくらいの大きさの災害なのか、どの地域でどのくらいの影響が出そうなのかなど、具体的な情報を集めて見通しをたて、自分にとって必要な備えをするようにしましょう。

防災ログ事務局:南部優子


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