【4月の災害】熊本地震(2) 複合災害への備えを 防災ニュース

2021年4月22日

4月22日 前回の記事で取り上げ熊本地震には、もうひとつ大きな特徴があります。巨大な揺れが襲った地震発生からわずか2か月後、九州地方を豪雨が襲ったのです。

九州地方は、前線の通過などに伴って積乱雲が群をなして発生し停滞する「線状降水帯」が起きやすいなど、しばしば豪雨災害に見舞われています。熊本地震が発生したのは4月中旬。大きな余震が何度も続く中、2か月後には梅雨の時期となってしまいました。6月19日から梅雨前線が活発化し、25日ごろまで約1週間、西日本を中心に九州から関東にかけ、死者7名、負傷者12名、住家被害291棟、床上・床下浸水2,535棟(消防庁調べ)と、広く被害が発生しました。また全国で513件の土砂災害(国土交通省調べ)も発生しています。

熊本地震で被災した地域では、地震による揺れで土砂災害防止の砂防堰堤や河川堤防の地盤が緩んでいるところへの豪雨となるため、土砂災害の警戒基準や、洪水予報の基準を引き下げたりして対応にあたりました。また、テント泊での避難を続けていた人たちへの支援も必要でした。

地震だけでも大きな被害が発生しますが、同じ地域で災害が重なる複合災害だと、被害が激甚化したり、それぞれへの対応に人的物的資源がひきさかれてしまい、なかなか回復せず被害が長期化したりする恐れがあります。都道府県や市町村が策定する地域防災計画は、地震編や風水害編など災害事象の特徴に合わせた事前対策や発災後の対応を整理しているものが多く、ほとんどの場合、地震と水害のように異なる種類の災害が次々と襲う場合は想定されていません。

災害はもともと単事象でも予測が難しいため、複合災害に対する計画を予めたてておくことはとても難しいものです。しかし実際に熊本地震のような実態がある以上、複合災害の可能性を考慮した対策も検討しておく必要があります。東日本大震災以降から複合災害への対応の重要性については議論されてきていましたが、熊本地震から後は対策の中に加えるところも増えていきました。

複合災害は地震と水害の組み合わせだけではありません。雪害や感染症の流行など、避難時や応急復旧時などに対応を妨げるさまざまな事象が考えられます。しっかり検討してから対策をとろうと考えていると、いつまでも進みません。例えば地震発生時の避難対策のときに大雨だったらどうするかなど、すぐにできる対策を少しずつ検討し、備えの中に加えてみてはいかがでしょうか。

画像:(車中泊やテント泊をする避難者 画像出典:熊本地震デジタルアーカイブ/提供者 熊本市「平成28年熊本地震 熊本市震災記録誌~復旧・復興に向けて~ 発災から1年の記録」より)

防災ログ事務局:南部優子


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